キ ミ イ ロ
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消灯時間が過ぎた頃、まだ眠りに就けられない。
目を閉じれば、櫂兄の真っ直ぐな目と、抱きしめられた温もりが蘇る。
「…………」
薄いレースの窓のカーテンから、月が顔を覗かせていた。
いつもより膨張したように見える月は、ふんわり柔らかい光を放っている。
その月に向かって
「……ごめん」
と呟いてみる。
櫂兄に言えなかったから。
──・・・だけどね、
本当はごめんだけじゃ足りない。
“ありがとう”
これも言わなきゃいけなかった。
真っ暗の病室。
いつもなら、なにも見えないんだけど。
櫂兄からもらったリストバンドだけ、目立って見えていた。