ただ、声をあげよう。

こえをあげよう

ばあちゃんが目を覚ましてごそごそと起きだす気配がする。

ダッコちゃんとキューピーちゃんを抱きしめて茶の間に入ってきた。

二つの人形に、いや彼女にとっての2人の子どもに向かって話しかける。

「美和。豊。お客さんが来とうよ。ご挨拶せんね」

あたしはばあちゃんに話しかけた。

「かわいいお子さんですね」

「父ちゃんが帰ってくるまでこん子たちを守っていかんといけん。
私はそればっかりを考えとうです。
奥さんももうすぐ生まれっとですね」

「はい。今年の終わりには2人子どもが生まれてきます」

「楽しみですね。体大事にしてください。
うちも双子ですたい。豊と美和といいます」


ばあちゃんはまるで花が開くように微笑んだ。


ばあちゃんの中で、時がまき戻って1945年で止まってるんだろう。

じいちゃんは、今のばあちゃんの中に存在してなくても、戦後を一緒に暮らした同士としてばあちゃんを守ってる。





あたしのほんとのじいちゃんが、昭吾が愛した人を。
< 35 / 44 >

この作品をシェア

pagetop