【短編】BLUE BERRY
◇BABY BLUE


「そこだっいけー!」

「勝て勝て勝て勝てっ」


8月の蒸し暑い夏。ミンミンと鳴く蝉には、時折鬱陶しさを感じる。

だけどそれさえも忘れられるのはきっと、この涼しい風を送り込む有能家電クーラーと、ふとつけたテレビでやってたサッカー中継のおかげ。

普段は全く観ないテレビも、こんなところで役に立つ。買っといてよかった。

サッカーの事はよくわからないけど、とりあえず私は今の時点で点を多く取っているチームを応援していた。

結構ハードな戦い。相手が1点とったら、取り返しにいく。これを生で観られたら間違いなく興奮するだろう。確実に。


「むおお、入ったー!」


だって、現にもう隣にいる友人・貴子(たかこ)はめちゃくちゃはまってる。

言っちゃ悪いけど、結構な不細工顔だよ。もう鼻の穴やばいっすよ。開きすぎて鼻息荒いの目立ってる…!

素晴らしく変顔なあなたに乾杯。

自分の中だけに閉まって笑っていたかったけど、それでも、優しい私は教えてあげましたよ。


「貴ちゃん、顔やばい」

「あ? 美しいの間違いだろうが」

「何をそんなに興奮して」

「そーなのよ! 聞いてーむふふ」


一瞬般若の顔を見せられたけど、びびらずに私は話を続けた。そしたら、へにゃってした笑顔になって。めっちゃでれでれ顔。きもいの範囲超えてる。

そんな貴ちゃんは、テレビを指差してこう言った。


「この佐藤って選手」

「ああ、さっき点決めたひと?」


どうせ元彼に似てるとか、そんな事言うんだろう。わかりやすい貴ちゃんの発言は先が読める。読めすぎて困る。

心の中では半ば呆れ気味に、顔上では完璧なまでの笑顔で答えた。だって、恐いんだ。貴ちゃんは、生き残った鬼だ。そう思わせるほどに恐怖。

テレビに指差したまま、顔だけをくるっとこちらに向けて、彼女は言った。

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