最高級の召使
「楽しいことなんてないよ。
だって…私の…人生なんて……もう
決まってる……。
人を好きになったって・・・
家のために結婚するだけ……
一瞬だけでも
夢を…見せてくれた……
倉之助に……感謝してる……」



「ごめん。
おまえのことよく知りもしないで
金持ちだからとか
責めてごめんな……
なんて言ってやればいいんだろ。
そんなつまんないこと言うな
しか言葉が見つからないし……」




「あんがと…
いーの……わかってんの。
金持ちに嫁ぐのが基本…
両親の気に入った人とね……」



「戻るわ…
私のいるべき場所へ……
倉之助に幸せになってって 
伝えて……」


私は校舎にむかって 
全力疾走した。


これから先
私は自分の運命を
好きになれるんだろうか……


・・・楓・・・ 
 
一瞬背中越しに
倉之助の声がした気がした。
幻でもうれしかった……                                        


あの時、振り向いていたら
何かが変わっていたのかな……                                                                                                                                                                                          倉之助が私を見つめていたって…
そう聞いたのは
何年もあとのことだった。                                                                                                                                                                              
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