宝石色の幻想
最終話





蒼空音のもとにある一報が届いた。蒼空音の両親からの手紙に入っていた、美乃の両親からの手紙。


そう言えば、と蒼空音は携帯を見た。忙しさにかこつけて、最近美乃と連絡を取ってなかったっけ。元気かな。

蒼空音は美乃の両親からの手紙を先に読むことにした。美乃の母の筆跡。手本として教科書に載せることも出来そうだ。その字の上手さが、蒼空音に事の重大さを説こうとしている。

始めは差し当たりのない時候の挨拶。妙によそよそしい。蒼空音と美乃の両親との付き合いだって、かれこれ十年はあるのに。不審に思いつつ、堅苦しい文章にざっと目を通した。


そうして目にした次の段落の一文。








『先日、娘の美乃が亡くなりました。自殺でした。』




冗談だと、幾ら読んでも否定するものはなく、現実だと思い知るまで、そう時間はかからなかった。



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