宝石色の幻想
第一話



「…なによ、これ。」

先ほどまで暴れていた少女の足が何枚かの紙切れによって硬直した。威勢の良かった声も何処かに追いやられ、細々とした掠れた声が響き渡る。


部屋の扉の前にいる女性は、膝をついて泣き崩れていた。赤子のような嗚咽を漏らす齢五十近くの女性の姿が、何とも痛々しい。

お前、蒼空音ちゃんの前でみっともない。女性にそう声を掛ける男性の声も、頼りないほど震えている。顔は俯いていてよく見えないが、噛み締めた唇が白くなっているのは知っている。



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