不器用な君の精一杯の言葉
目の前に写るもの




今日もクラスに来ている。
彼は、少しだけ友達を小突くと楽しそうに笑う。その笑顔にほんのり頬がほてるのが分かった。

心臓はドキドキなんてもんじゃない。バクバクをも越えて今にも胸がはち切れそう。

つんつん、と背中をつつかれて見ると親友がにやりと怪しげな笑みを見せた。

「今日も来てるね、アイツ」

にやっと笑うと楽しそうに、彼を見る。私もつられてまた視線を戻した。また、眩しいぐらいの笑顔が私の心臓を暴れさせる。

「知ってる?」

「なにが?」

赤縁眼鏡をかけた彼女がキラリと目を光らせた。こんな時に言う彼女の言葉は何故か予言者かっていうぐらい当たっていて身を乗り出して聞く体制を取った。

「アイツね、本当はこのクラスに仲良い奴なんていないんだよ」

彼女は何を言っているのだろう。だって、今彼はいつも通りにクラスの男子と談笑しているというのに。





「アイツとあの男子はただの部活仲間。仲が良いわけじゃぁない」

「じゃあ、なんで…」

このクラスに来ているのだろう。彼は、A組、このクラスはE組。こんなにはなれたクラスに毎日何しに来ているのだろうか。

「そう、そこ!で、まぁあたしなりに調べたわけよ」

ふふふ、と怪しげな笑みで私を見る。や、そんなまなざし向けないで下さいと言いたいところだが彼女の機嫌を損ね聞きそびれるのはなんだか勿体ない。
なんたって、彼の情報なのだから。

「そ、れ、が、ヤツには好きな女子がいるらしい」

このE組にね、と言う時にはもう既に思考停止。ついでに言うなら、聴覚シャットアウト。頭の中真っ白より、頭の中真っ黒だ。

もう、嫌だ。

見えるのは優しく笑っている彼。好きだって言う前に失恋、だ。下を向けば直ぐにでも涙が零れ落ちそうだった。

「ごめっ、私ちょっと次の授業サボるね…」

涙の膜でゆらゆら揺れる視界の中教室を飛び出した。何がなんだか分からないまま廊下を走って、走って…とにかく彼から離れたいくて。

「…えっ、ぁ、」





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