【CORORS①】虹色の扉

 窓辺を眺めていると渡り鳥がVの字になって夕闇の空を羽ばたいている。


 「もうそんな時刻か」


 更に窓の外を眺め続ける。


 こちらに向かって1羽の白い鳩が舞い降りてきた。

 「おいで」


 俺は窓からそっと手を出し、腕を枕木代わりに停まらせた。

 手の上に乗る小さなお客様の頭をそっと撫でてやる。

 足に何やら帯のようなものが巻かれているのが目についた。

 手紙?

 伝書鳩か――

 俺宛という確証もないのだが、自然と帯をほどいていた。

 そこには短い文でこう書かれていた。


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 ニコラス様

 直ぐに参ります

 どうかご無事で

         シモン

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 「エル、ありがとう」


 『クルッ クルゥ』


 俺の腕に停まっていた鳩は、一鳴きして飛び立った。

 ん? さっきの鳩は“エル”というのか?

 自然に口から出た言葉に今一番驚いている。

 すると俺の名前は――


   コンコン


 客間の扉を叩く音がし、手に持っていた手紙を胸の内側に隠し入れた。

 何故だが、見られてはいけない物のような気がして。


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