【CORORS①】虹色の扉

 「ソフィア、何故コイツを庇うのだ? お前は私の婚約者であろう」

 「はい」

 「なら、邪魔をするでない。この客人に連れ込まれたのであろう……可哀想に」

 「メルセデス様、……お言葉を返すようですが、それは違います。」

 「何?」


 メルセデス殿の表情が一気に険しくなってきた。


 「私が彼と共にしたいことを望んだのです」

 「この恩知らずが」


  ―― ビタァン


 「ソフィア殿」


 止める間もなく、メルセデス殿の右掌がソフィア殿の頬に一撃した。

 彼女は、それでも彼の瞳を食い入るように見つめている。

 「そんなにコイツの事がよいのか」

 「彼は、私に翼を付けてくださいました」

 「そうか。なら、その翼が無くなるようにしよう」

 憎悪を増したままの表情で、彼は俺に刃を向けた。

 穏やかな口調ではあるが、冷酷なまでの瞳。


 「ニコラス殿、ソナタの国との国交は無かった事に致す」

 「私の名前を何故?」

 「やはりそうか、街でソナタを捜している者に出会ってな。調べさせてもらった」


 国交――

 彼のこの言葉で記憶のパズルが繋がった。

 そうだ。俺はこのヨルデス国と国交の為の視察に来た。

 そして、今目の前にいる彼はこの国の、――ヨルデス国王。

 なんて事だ。俺のしたことは国交ではなく、宣戦布告になってしまったのか。

 ガクリと肩を落とした。

 普段は館の外にいる見張り兵たちまでもが、今この部屋の中にいる。

 俺たちは、抵抗する事も出来ず、手を後ろに組まされた。

 そのまま引き摺られるように、館の塔の天辺にある牢へと入れられてしまった。

 勿論別々のものへと。

 だが、俺は後悔はしてはいない。

 ただ、彼女の事だけが気掛かりでならない。


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