mixed Emotion

どんぐりの帽子

「で、誰かいい人いた?」

平日のお昼休み、

タコさんウインナーをつっつきながら美玖が尋ねると、


「ゆりはあの子だよね?」


と理香ちゃんが


見透かすように私を見る。


6月にしては珍しく、


窓からは太陽の光が降り注いでいる。


「えっ?誰?あたしにも教えてよ!」


美玖はその太陽にも負けじと勢い良く身を乗り出して

イスが派手に音を立てて倒れた。


周りから注目を浴びたせいで、なんだか気恥ずかしくなった私は


言うのを躊躇した。


「あ!わかった!つかさ君だ!」


言い終わる前に美玖がさらりと言い当てた。


ツカサくん・・・


聞き覚えのない名前に、
私は彼の名前を知らなかったことに気がついた。

「うん、そうそう、つかさ君としゃべってる時だけ、
ゆりってば私のブレザー
すごい強くにぎるんだもん。
すぐにわかったわ。」


緊張すると服の裾を強くにぎる癖は、

昔からあった。


でも、そんなことより美玖も理香ちゃんも名前を知っていたのに、


私は知らなかった。


私にたくさん話かけてくれたように思ったけど、
みんなともしゃべってたのかなぁ。


少しがっかりしたような気持ちが

やっぱり私、彼のことを気にしているんだ

と、実感を沸かせた。
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