―ユージェニクス―




少年と少女が部屋から出て行くのを見届け、咲眞は黒川から銃を離す。

赤い雫が小綺麗な床に落ちた。


「こ……こんな事をして、ただで済むと思っているのかっ?」

「……さぁね」

肩が痛む。
拜早に刺された時とはまた違う痛みだ。


茉梨亜と黒川が家族――

そんな、本当か嘘かも分からないものに構いたくない。

鵜呑みにすれば自分が壊れてしまいそうだ。

何も、考えるな――



「私に盾突いた事…後悔するぞ?」

妙に偉そうになった黒川に、咲眞は葛藤中の頭で流石にむかついた。


「…ねぇ、僕がなんでこの部屋にわざわざ来たと思ってるの?茉梨亜とどんな関係だろうが今は知った事じゃない」

「……!」

再び黒川の額に突き付けた銃は銀色。

「本当は消してやりたいよ?おまえは自分の好きな事やって…いい気持ちかもしれないけど、でもね」

「……ひ」

「僕はもう、あんたに振り回されるのは沢山だ」




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