―ユージェニクス―

―4―

Bブロックのとあるアパート。

アパートといっても家賃があるわけでもなく、ただその建物があるだけ。
外観も壊れたコンクリートがばらけており、むしろ崩れた背の低い立体駐車場という感じだ。

傷が目立つ紺色の扉を開き、茉梨亜は家へと帰って来た。

一人暮しの1DK。
ただ女の子らしいとかそういう部屋の前に、物が無い。

狭いダイニングに簡素な机と椅子。
奥には戸棚付き洗面所と風呂場。
アコーデオンカーテンの後ろにはシンプルなベッドがある。

茉梨亜はこの簡単な部屋が気に入っていた。
立地も人通りから離れた場所にあり目立たないので、夜も静かでよく眠れる。



「ただいまー」

誰も居ない部屋に茉梨亜の声が高く響いた。

「やっぱり独りだと寂しいなー。今度シア連れてこようかな」

長く一人暮しをしていると何故か独り言が多くなる。
だが茉梨亜は小さな冷蔵庫を開け、ちょっと黙った。
「……たいしたもの無い…買い物行く?でも面倒…」

昨日の夜から何も食べていない。
国からの食物配給は調度明日だが、それまで何かでやり過ごさなければ。


「もー疲れた〜〜〜」

昨日から色々あって、茉梨亜は疲労が顔に出ていた。

今から出かけるのは諦め、茉梨亜はふらふらとベッドへ向かう。
「ちょっと休もう……」
ぽつりと言って勢いよく倒れ込んだ。





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