―ユージェニクス―
勅使川原は一度仕切りへ視線だけ投げてから、ベッドに寝転ぶ拜早を見やる。

「先に血を拭くから、そのままでいろ」

「ハァ…でも…」

そう言われても自分の怪我の様子は気になるもので。

「俺の足どうなんすかね……」

少し首を上げて足先の方を見ようとすると、眼光鋭い勅使川原と目が合った。

「そんなに穴の開いた傷が見たいのか?」

「、…見たくないデス」

ドきっぱりと言われた言葉は流石に拜早の姿勢を正させる。
やはり穴が……

「あー……やっちまったな……」

思い返してやり切れない様な溜め息を衝く。

だがあの時銃弾を避けれていればと考えても後の祭、潔く治療される事にした。



「……ん?」

いや、ちょっと待て。

足は穴が開いている。
しかも片方は弾が掠ってえぐられたも同然だ。

確かについさっきまで歩いていたが、それはきっと麻痺して痛みとかが無かったからで……

(やばいんじゃね、これ普通に手術レベルなんじゃ…!?)

嫌な汗が出てきた。
スラム育ちでも手術くらい知っている。医者がナイフとか色々持って身体を解体するのだ。

「おい」

「ハイッ!!」

頭の中で一瞬凄まじい想像が過ぎったが、勅使川原の呼び掛けに我に帰る。

「おまえの傷だがな…」

「……ハイ」

拜早は自分で真顔になっているのが分かった。

「終わったぞ」

「……足として、ですか?やっぱ」

「? …兎に角、後は安静にしていたまえ。まぁ歩いても支障はないがな」

「ハァ…」

そうか、安静。
やはり。
撃たれたのなら治るのに時間が掛かるだろう。
いやきちんとは完治だってしないかもしれない。
歩けるのがせめてもの救いか……


「……アレ?」


え? 歩ける?




マヌケにも飛び上がる勢いで起き上がった。
両足は既に綺麗な包帯が巻かれている。
なんとも手際がいい!
いや、医者なのだからそれはそうなのだが。

「え、あ、の、歩いていいんすか!?」

「ああ、これで処置は終わりだ。無茶をしなければ塞がる傷だし…普通の生活も問題なく出来るだろう」


「…まじで?」

なんとも有り難い事を言われた。

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