涙のアト
 
 
 
「何ソレ!
 
アイツ最低じゃん!」
 
 
 
一通り話し終えると、美月は怒りで声の制御が出来なくなってしまっている。
 
 
 
「ちょ、美月っ!
こ、声!」
 
 
 
美月の声に、周りがザワザワとこちらを見る。
 
 
 
私は慌てて両手で美月に掌を見せながら、周りの様子を伺う。
 
 
 
…あ、…
 
 
 
ふと一輝と目が合った。
 
 
 
一輝はこちらを見て、私と目が合うと優しく微笑んだ。
 
 
 
『イイ女』
 
 
 
思い出さなくてもいいフレーズが、私の脳内を過ぎる。
 
 
 
途端に頬が熱くなる。
 
 
 
「未来?どした?」
 
 
 
少し落ち着いた美月が私の変化に気付き、首を傾げる。
 
 
 
「う、ううん。何でもない
 
それより、さ…」
 
 
 
私は頭に浮かんだフレーズを消す様に、大きく首を振り、美月に視線を戻す。
 
 
 
.
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