私の敵は『俺様』です。


あぁ!!


黙ってしかいられない自分にイライラする!!


言いたくない、絶対に言いたくない!!


だけど…


「ほら、早く」


退学はごめんだ。


「…葵…先、輩…」


「よく出来ました」


その瞬間、温かいものが唇に当たってあたしは目を見開いた。


肌に当たる暖かい吐息。


目の前に見える長い睫毛。


キス…されて…る…?


そう気付いたと同時に、解放されてあたしは廊下にペタリ、と座り込んだ。


「じゃあまたな、夢」


それだけ言い残して、まるで何事もなかったかのように廊下を歩いて行く杞憂 葵。


ポカンと口を開けて後ろに立っていた理衣は、正気に戻ったのか、だんだん小さくなって行く杞憂 葵の後姿に叫んだ。


「あんた、私の夢にこんなことしてタダじゃおかないんだからーっ!!!」


その声に振り向きもしない彼に、理衣が小さく呟いた。


「アイツ…アイツいつか絶対殺ってやるっ!!」


まるで嵐が過ぎ去った後かのような状況に、


あたしは廊下にへたり込んで、真っ白な頭の中何も考えることはできなかった。


.
< 11 / 12 >

この作品をシェア

pagetop