【超短】近距離恋愛
―パタン―
いつもと変わらないドアの音が、
今日はなんだかとても悲しく、冷たい耳に響いた。
「ただいま…。」
「何?花音ねぃちゃん元気ないじゃん?なんかあった?」
ばれた!?
「別に…。な、何もないよ。」
杏(あんず)には言いたくない。
だって、自分が自分でショックを受けているだけだから…。
「なら、いいけど。」
はぁ、何もかもが嫌だ。
もう、何も考えたくない。
恋って苦しいんだね。
悲しいんだね。
今日は、泣こう。
泣き疲れて意識を手放そうとしたとき、
なんでわたしは、こんなにも泣いているんだろう、苦しんでいるんだろうと思った。
だけど、そこは何も考えないことにした。
思い出してしまったら、今以上に泣ける気がしたから。
私は、思い出してしまう前に無理やりにでも意識を手放そうとした。
「明日、上手く笑えるかな?」
不安な思いを無理に押し潰し、
深い眠りに就いた。