僕様王子に全てを奪われてⅡ
人通りのある歩道で、私は思いきりため息をついた

有栖川のお母さんと名前が似ている…と思うだけで気が重くなる

名前で、人生が決まるわけでも、幸せの量が決定するわけでもないのはわかっている

…でも、滝沢家を憎んでいる有栖川の母を思い出すだけで、胃の奥が重くなる

有栖川は今、どんな気持ちなのだろう

私は有栖川と夫婦になれてうれしいと思う

今朝から、にこにこしてたけど…本心ではどう思っているのか

よくわからない

だって…母に反対されている女と結婚するって、どんな心境なのか

私には理解できない世界だから

きっと苦しい思いをしているのではないかって考えてしまう

私には見せない心の闇があるんじゃないかって…

有栖川だって、このままではいけないって思っているだろうし…

私はこのままじゃいけないと思う

母に黙ったまま、結婚しても…いつかはバレる

知らないままで、いいわけがない

有栖川は、華道の世界を背負っていく人だから…

「はあ…嬉しいけど
気が重いよ」

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