風の吹く町
クラスの前で叔母と別れ、
担任に連れられてクラスへ入った。

ざわついていた教室が、
シーンと静かになる。

日直が号令を掛けた。

挨拶をする。

「まずは転校生の紹介ね。
今日からこのクラスの
仲間になった、
倉田尚翔くんです。
彼は見ての通り少し足が悪いけど、
仲良くしてあげてね。」

やはり中学三年生だ。

返事すらしない。

それどころか、参考書を広げて
勉強を続けている者もいる。

尚翔はますます
不安になってしまった。

「倉田尚翔です。
よろしくお願いします。」

そう自己紹介をしても、返事は無い。

「えっと…
席は後ろの空いた席使ってね。
学級委員!」

「はいっ。」

真ん中に座っていた長い髪の女の子が、
前に向かって歩いてくる。

そして、尚翔の荷物を持ってくれた。

「…ありがと。」

「あたし、杉原七海。
もう一人の学級委員は
あそこで勉強してる七瀬渉。
彼に代わって言うわ。
よろしくね。」

「よろしく。」

そう挨拶を交わした後、
自分の席についた尚翔は
七海から荷物を受け取り、座った。
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