エージェント・レイ‐狂人の島‐
シバタはタクティカルベストのポケットの中から、小さなケースを取り出した。

中に入っているのは、薬品のアンプル。

「ナノマシンを知っているか?」

ナノマシン…確か、0.1nmから100nmサイズの機械装置。

ナノとは10-9を意味する接頭辞であるため、原義では細菌や細胞よりもひとまわり小さいウイルス(10nmから100nm)サイズの機械といえる。

医療や精密作業の分野での活用が期待されていると聞いた事があるけど…。

「機関はナノマシンを逸早く実用化し、既に様々なタイプのナノマシンを開発していた。これもその一種だ…人体改造用ナノマシン」

シバタが語ったのは、身の毛もよだつ恐るべき話だった。

彼の手にしているアンプルは、あの一本でナノマシン10億に相当するという。

ナノマシンは生物の体内に侵入する事で、活動を開始する。

理性を奪い取り、その個体の攻撃性、凶暴性、残忍性を際立たせるように脳改造を施す。

同時に神経系にも手を加え、痛覚を麻痺させ、肉体の耐久力を高める。

ナノマシンたった一体に侵入されるだけで、その生物は凶暴な殺戮兵器に改造されてしまうのだ。
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