【連作】そらにかなでし〜平安朝禁断恋草紙②〜
「一の君……そこにいらっしゃるのですね」

一の姫様が、かすかに震えるお声でおっしゃいます。

あたたかい肌の触れ合いに、隔てるものなどないかのように、お二方は、しばし見つめ合っておられましたが、

「姉上……私は、」

その無言の交感を一の君の静かなお声が打ち破りになりますと、

「君、どうか、お心を言の葉になさらないで……」

ふと、ため息の中に、一の姫がそのようにおっしゃるので、一の君とても、それ以上お続けになれるはずもございません。
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