時 空 堂

 少ない全ての荷物を袋に入れ、俺は篠原を待たずに事務所を出た。居心地が悪すぎる。胸の中がムカムカする。長年働いてこんな終わりかたって・・・。

「やっぱりこれは過去なんだな・・・。あの日だ。なにも変わっていない、そのままだ」

 そう、これは俺が望んだあの日だ。

 荷物を握りしめて、ゆっくりと階段を降りた。

「おーい、黒河。ちょっ、ちょっと待ってくれよ」

「ん?・・・あぁ」

 紙袋に荷物をまとめた篠原が急ぐように階段を降り、歩み寄ってきた。顔色が少し戻っているような気がした。
< 107 / 426 >

この作品をシェア

pagetop