時 空 堂

「っ。はぁはぁ」

 血がだらだらと腕をつたう。それを見て、動悸が激しくなる。

「もうっ、恭ちゃんが逃げるから刺し損ねたじゃない」

 にこにこと笑いながら、血のついた包丁を持って近寄ってくる。やばい。このままじゃこいつに殺される。

 そう思いながら、後ずさりすると、脱衣所が背後にあることに気がついた。とっさにそこに飛び込み鍵を掛ける。

「恭ちゃん、出てきなさい。逃げなくても大丈夫よ」

 腕がうまく動かない。何が起きた?どうしたらいい。どうしたら・・・。

「誰か助けてくれ・・・、誰か」

 鍵をかけた扉の向こうでがちゃがちゃと音を立てながら、あいつがドアノブを動かしているのが分かった。
< 223 / 426 >

この作品をシェア

pagetop