時 空 堂

┣幻想


 誰かの家だろうか。見たことのない部屋で言い合いをする、見たことのない中年の男二人。俺が時空堂に居る間には見たことのない人たちだった。

 会話もはっきりと聞こえる。割りと近い場所でこの状態が録画されているようだ。これは刹那が見ていた視点なんだろうか。刹那が存在を消して、様子を伺うことなんてたやすいことだろう。

 ふふっ。普通の人間にはできないことなのに、当たり前と感じるようになった自分が少しおかしかった。

「てめーが着服なんてしなけりゃこんなことにはならなかっただろうがよ」

「何言うてますねん。あんたが言い始めたことでっしゃろ?」

 口の悪い中年の言い合いが少し続いた。そして次の瞬間「バキィッ」と聞いたことないような音が響いた。

 一人の男が振り上げた、白い大きめの置物で、もう一人の男は頭を叩き割られていた。
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