流れ星
しかし、半年くらい前に取引先にぼろぼろに文句を言われた愛菜が非常階段のところで1人うずくまって泣いてるのを見てしまった。
普段のぴしっとした背中からは想像できないような小さい背中。
誰か、あの背中をさすってる奴はいないのか、と無性に苛立った。
そしてそれが恋だというのを知った。
それからのナツは積極的だった。
毎日と言っていいほど、夕飯に誘ったり、仕事でも与えられた仕事以上の事をこなしたりとどんどんと成長していった。
整った顔をしている愛菜は彼女の普段の会社の様子を知らない取引先の男に食事に誘われることが多かった。
自分より、かっこよくて、お金も持っていて、仕事がばしばしできる奴に誘われたと噂で聞いた時は焦ったが、その日は丁度ナツの誘いを受け入れてくれた日だったので命拾いをしたという感じだった。
それからも、何回か食事に行ったり、共通の趣味の映画を見に行ったりとし、付き合って下さい、と言ったのは1か月前。
道のりは長かったがその分、愛菜もナツに心を開いてくれていた。
はい、お願いします、とはにかみながらも言ってくれた愛菜を見た時は思わずガッツポーズをしてしまった。
最初こそ指導権は愛菜にあったようなものだが今はほとんどナツにある、と言っても過言ではないくらいになってしまった。