雪に咲く向日葵
その日の放課後。
下駄箱に、大きな青いエナメルバッグを垂らして膝を曲げる小泉がいた。
僕はPTA用の赤いスリッパを滑らせて歩く。
「あれ、一人?」
「あ、えっと…、か、亀谷君だよね。うん、みんな部活とかあるみたい」
「へぇー、小泉だって何かスポーツやんでしょ」
僕は大きな青いエナメルバッグを指差した。
揺れる動物のストラップ。
小泉は青いエナメルバッグに目を一度配ると、ゆっくりと優しく微笑んだ。
即座に反応する左胸の臓器。
「ああ、これはただ荷物を運ぶのに便利だから」
「はは、何それ」
「うん、ごめんね」
ほとんど化粧をしていないからか、小泉の表情は鮮明だった。
授業中はかけていなかった髪の色によく似た焦げ茶の眼鏡の奥の瞳。
緊張とか、そういうの。
高校の面接の時の朝の僕の瞳にそっくりだった。
僕はスリッパを下駄箱に入れ、代わりの靴を拾った。
踵が潰れたローファ。
「今度そのエナメル貸してよ。漫画とか持ってくるの楽そう」
「はは、いいよ」
「ありがと、んじゃまた明日」
また明日、と小泉。
僕は砂利が転がった通路を歩いてゆく。
日が沈み始めた空は綺麗で、その太陽の光は神秘的。
長方形のガラス扉に手をかけると、そこには滲む小泉の姿が見えた。