Bitter&Sweet



姫の事で頭がいっぱいのオレは


苛立ちながら


「こんな風に家に来られては迷惑です。
言ったでしょう?
オレはあなたとは結婚しません」



美紅さんは笑顔を1mmだって崩さずに



「はい。
だけど私も言いました
翠さんと結婚したいです」



なんなんだよ。この人。


まともに話が通じないのか?



「……でも」


美紅さんは うつむいて


「やっぱり、お約束もしていないのに
いきなりお宅を訪ねるのは
ルール違反かも知れません」



そのままリビングに戻り
バッグを持って



「お邪魔して申し訳ございませんでした」


深々 オレに頭を下げ


「南さんにも謝っておいていただけませんか?

もちろん、後日、私もお詫びを申し上げます」



突拍子もない行動をとって


いきなりしおらしく謝る


それこそズルくないか?


これ以上、オレに文句を言わせないためだろう



この女


おっとり見せて


意外に
頭がよく回転するのかもな



「お詫びなんて、いりませんから
二度と、こんな事はしないで いただきたい」



こんな事を言ったら

院長に泣きつくだろうか?



でも 美紅さんは 全く動じず



「はい。申し訳ございません」



また深々と頭を下げた



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