Bitter&Sweet



カシャン……


新はフェンスを掴み


「見てごらんよ。翠」


下に広がる中庭の景色を指差した



新の指の先を見つめると



姫だ


姫が病棟の子供を連れて
シャボン玉で遊んでた



「姫子ちゃん
子供好きみたいだね?
翠は知ってた?」



子供たちと楽しそうに笑う姫



「姫子ちゃん、結婚したら、すぐ子供が欲しいって言うタイプじゃない?」



一緒にいられたら
何もいらない



記憶を失くす前は
オレに よく そう言ってた



「ねぇ、翠」


意地悪そうな笑顔をオレに向け



「姫子ちゃん
4歳の男の子に『結婚して』って言われたら断れるかな?」



――――4歳の男の子?―――



新の言葉の持つ意味がわからない



「新、4歳じゃ結婚は出来ないだろう?」



わけがわからないオレを
新は鼻で笑い



「翠くん。子供は最強だよ?
なんだろうね?あのパワーは」



「なんの話だよ?」


「うん?
いや、子供には勝てないって話だよ
ぼくでも
――――いくら翠でもね」



オレは すっかり忘れてた


姫が4歳の患者からラブレターをもらってた事を



やきもちを妬いた姫を抱きしめた事で



オレは少し安心してしまったんだ



姫はオレから離れない


例え過去を忘れても


姫がオレから離れるはずがない



だってオレの姫だから



すっかり安心していたんだ



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