Bitter&Sweet



あんなことになって


それは記憶を失くしたこと?


それとも


2週間眠り続けたこと?




「………悪いことなんて
思えなかった

だって幸せだったから」



遠くを見るように目を細めたお兄ちゃんは


今にも消えてしまいそうなほど
頼りなく感じて



「お兄ちゃん………
私たち、どんな罪を……」



犯罪者なんて
信じたわけじゃないけど


嘘だと言えるような


そんな雰囲気じゃない……



「この世でいちばん
甘くて苦いことだよ」



「え?」



「………ふっ」
お兄ちゃんは
困ったように笑って


ギュッ
私の鼻をつまみ


「……ふがっ」


急に鼻をつままれて


「にゃにふんのよぉ
 (なにするのよぉ)」


驚いて怒る私を


「はははっ」て笑いながら見て



「悔しかったら
思い出せよ、姫」



パッと私の鼻から指を離し


寝室へ行ってしまった



少し痛い鼻をさすりながら


お兄ちゃんが入って行った寝室のドアをじっと見つめ



……この世でいちばん
甘くて苦いこと?



わけわかんない


結局うまく誤魔化された……



お兄ちゃんはこの世でいちばん
甘くて苦い罪を犯した犯罪者



私はそれを助けた共犯者……



「……なんだそれ」


やっぱり いくら考えても


お兄ちゃんの言ったことは
理解できなかった




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