Bitter&Sweet
「私には4人子供がいてね」
院長は席から立ち上がり
オレに背を向け
窓のブラインドの隙間を指で開け
外を眺めながら話した
「みんな、それぞれ一人前に片付けたんだが
末の娘だけ、仕事も長続きせずに家にいるんだ」
院長
なぜオレに家庭の話を?
なんだか とっても嫌な予感
「娘は今年で25になる
親の欲目かも知れないが
なかなか、あれで器量がいい」
…………だから、なんですか?
「名前は『美紅(ミク)』…可愛いだろう?」
「はぁ」
可愛い名前か どうかは別として
とりあえず笑顔で相づちをうったけど
口元がひきつった
「………鈴木先生は独身だったよね?」
……頼む
誰か、オレのPHSを鳴らしてくれ
急患だから今すぐ戻ってくださいって
今すぐ院長室から出てくださいって
誰か
誰でも いいから
頼む
「どうだ、鈴木先生」
院長はブラインドから指を放し
オレを振り返って
「美紅と会ってみないか?」
あ~ぁ。
『会ってみないか?』
それは つまり
院長の娘との見合いだった