吸血鬼と紅き石
(あ)

昨日自分達がいた部屋。

窓枠に行儀悪く凭れて、青年──レンバルトは立っていた。

(やっぱり、吸血鬼なんだわ)

明るい陽の光に照らされて、その足元に出来る筈の影がない。

青年の正体を疑っていた訳ではないのだが、今更ながら納得する。

納得したの、だが。

入口で青年の姿を覗き見しながらリイエンは眉を寄せる。

昨日の態度は謝りたい。

謝りたいの、だが。

(何と言って…謝れば良いのかしら)

いや、その前にどう青年の前に姿を現せば良いものなのか、リイエンは思い悩む。

と。

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