続・幸せの契約
チェストの一番奥

私の通帳と一枚の紙



その紙を広げた

“契約書”


大きく書かれた文字




契約内容を読み進めて
最後の一行で目が止まった


『萩乃宮蔵之助一子、萩乃宮大和との婚約は契約者本人の意思により、解消することができるものとする。』





大きく息を吸い込んで
ゆっくり吐き出す




瞼を閉じれば
大和さんと過ごした日々が鮮明に写る



おはようございます。って優しく微笑む顔



温かくて大きな手



切れ長の澄んだ瞳
形のいい薄い唇




初めて
1つになった夜






ぶわっ…!


瞼を閉じていたのに
涙か一気に溢れ出した


「うっ…う…。
や…まとさん…。くっ…。」


止まることの無い嗚咽



悔しくて

情けなくて


悲しくて



必死で唇を噛んで
声を溢れる感情を圧し殺した
< 107 / 223 >

この作品をシェア

pagetop