続・幸せの契約
「ありがとうございました。」

食べ終えて出ていくお客に頭を下げた


海沿いの小さな街
古い洋食屋さん


はじめてこの街に来て
すぐに住み込みで働き始めた


「平瀬さん。ランチ上がっていいよ。」


初老のマスターは
素性を何も話さない私を優しい笑顔で雇ってくれた


「はい。ありがとうございます。」


エプロンを脱いで裏に下がった


併設されたマスターの自宅の茶の間でまかないのオムライスを食べる


テレビは付けない


だって
萩乃宮のことを


大和さんの事を…
思い出してしまうから



静かな部屋で
1人での食事



前は当たり前だったのに

今は
何でだろう…



こんなにも

寂しい…
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