月は昼に恋を、する。
わけ
車の音がして 屋敷の前で停車した
バンと ドアを閉める音と 土を踏む音
「あーーー疲れた たくっ親父め」
「まあ そう 怒らなくても 兄さん
小陽ちゃんが 怪我しないだけ 良いと思って ね?」
二人の男が帰って来た
最初に声を上げた 黒髪に 深い藍色の瞳で 背の高い 青年は 篠夜 煌季
一方 煌季を慰めるように 声を掛ける 黒髪で漆黒の瞳をした 彼より 少し背の低い青年は篠夜 薙真

「おかえりなさいませ 煌季様 薙真様」
琉実が声をかける

そして 俺の 長兄と 次兄だ
「おかえり 兄さん 少し 聞きたいことが…………」
「あれ 小陽ちゃん ソファで 寝てたよねどこに行ったの?」
「小陽 様というのですか あの方なら 満月様が 客間へ お運びになりました」
琉実が口を 滑らせ 言ってしまった
兄さん達の顔が 憐れむように 悲しい表情になる
「満月 お前が こんなに手が早いとは…………」
「いくら 婚約者候補だって やっていいことと悪いことがあるんだよ?」
二人が言った意味が分かり 満月は顔を上気させる
「べっ 別に ただ 客間に 運んだだけですっ 手は付けてませんっ」



ん? なんか 騒がしいな?
出ても 良いかな?

小陽が ノブに触れると 案の定 扉は開いた

廊下に出てみると ひんやりと冷たい
賑やかな声は 明るいところから聞こえる
微かに 満月の声も 聞こえる
小陽はそちらに足を向けた
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