ポケットにカッターナイフ

写真の中の暁は半袖の制服を着て大きな犬を抱き締め、お世辞にも可愛いとは言えない顔で笑っている。

夏からは引き離された筈の冷房の効いた部屋の中、机の上には封を切られ空になった封筒と錆びた赤いカッターナイフが並んでいる。

封筒には差出人の名前は無い。
それでも暁には解った。

五年前の夏の、暁の人生を変えた恋の思い出が一通の手紙と共にやって来たのだ、と。
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