夢みる蝶は遊飛する


このままずっと読まずにいるか。

今読んでしまうか。


読まずにいつも心にひっかかりを覚えながら生きていくか。

読んでたとえまた傷を受けたとしても、それを乗り越えて生きていくか。


あの夏の日からずっと、私はそのどちらも選べずにいた。

今まで読まなかったのは、迷いがあったから。


どちらを選ぶべきか、それは明白だ。


けれど、確実に間違っている道だとしても、それを選びたい時だってある。

誰もが強いわけではない。

困難を乗り越えていける強さとしなやかさを、誰もが持っているわけではない。



二つの感情が、私の中でせめぎ合う。

唇を噛みしめて、心の中で必死に闘った。

そして。

私はベッドから起き上がった。



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