夢みる蝶は遊飛する

「須賀祐輝、アイツに聞いた。正確に言えば、アイツのお母さんから。うちら幼馴染で、親同士も仲良いから」


私が答えを導き出すより先に、柏木さんがその名前を出した。

やっぱり、と思いながら、心の中で盛大なため息をつく。

信用なんか、するものではない。

隠し通したかった秘密を、知り合った初日に話してしまったあの日の自分を恨んだ。


「ねえ、ごめん。本題に入っていい?」

「・・・本題?」


嫌な予感がする。

できれば逃げ出したい。

けれどそれができないのはなぜだろう。

私の体は、金縛りに遭ったかのようにその場に拘束されていた。

顔がこわばっているのがわかる。

柏木さんが、私の瞳を真っ直ぐに見つめた。


「女バスのキャプテンとして勧誘に来ました。バスケ部に、入ってもらえませんか」


真実を知ることを怖がって逃げまどう私を、どこまでも、どこまでも追いかけてくる。


決して私は、幸せにはなれない―――・・・・

< 42 / 681 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop