旦那様は社長 *②巻*

キュウッと締め付けられるように痛む胸。

原因はそれだけじゃない。


あたしの腕を支えながら隣に佇む悠河の顔が、どこか遠くを見ているような切ない表情に変わる。


あたしの視線に気づくと、何でもないように誤魔化すけれど。


あたしもそれ以上追及することはなかった。


言葉にしなくても、痛いほど伝わってくるから。


このままじゃいけない。

このままじゃ、あたしも悠河も闇から抜け出せない。


そう思った。


「藤堂さん、またしばらくご迷惑ばかりおかけしてしまうと思います。……だけど、これが私にとって、一番の療養なんです」

「え?」


「それに今までのままじゃ、次は悠河が倒れてしまいます」


精神的にも。

肉体的にも。


それだけはぜったいに見過ごせない。


秘書として。

……妻として。


「確かにそうだね。最近の悠河、自虐行為ばかりしてたからな」

「黙れ、慎也」

「へいへい」


そう言いながら、藤堂さんはさりげなくあたしのカバンを持ち上げた。


「あッ」

「これはオレの仕事のうち」

「でも……」


「光姫ちゃん、今はもっと甘えていんだよ」


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