旦那様は社長 *②巻*
■第12章■新しい伝統の始まり。

一歩客間に足を踏み入れると、少し俯き加減で、肩を落とした会長の姿が目に入る。


そのおでこには、なぜか絆創膏が2つ貼ってあった。


どうしたんだろう?と思いながらも、あたしが驚いたのはそれだけじゃない。


「タマコさん!?」


悠河が会長の隣に座る女性に気付いて、思わず声を上げた。


「久しぶりね、悠河。元気にやってるの?」


「タマコさんこそ、もうお身体は大丈夫なんですか?」


「えぇ。一時はどうなるかと思ったけど、今はこの通り。あなたたちの結婚式に行けなくてごめんなさいね」


タマコさんはそう言ってニッコリ微笑んだ。


悠河の言う“タマコさん”って、一体誰だろう?


以前お屋敷に伺った時も、こんな女性はいなかったような気がする。


「あの……」


「あぁ、光姫さんは“はじめまして”ね?私はここにいる有栖川悠星の妻、タマコ。つまり、悠河の祖母にあたるの」


「え、おばあ様!?」


悠河を見るとフイッと視線を逸らされた。


こんな大事なこと、あたしに言うの忘れていたなんて!!


会長ばかりに気を取られていて、おまけにおばあ様の話なんて一度も出たことなかったから、てっきりもう他界されてるのかと思っていた。


まさか会長と同じくご健在だったなんて……。


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