私の道 ―(実話)―
「この時計は俺がもらうよ」


何も無くなった左手首は
少し寂しいような不安を感じた。


「梨華、困った事があったらいつでも電話していいからね」

「うん、ありがとう」


でも、これ以上甘えられないよ……。
この先、何があっても。




「もう、行けよ」

「うん…」




玄関でブーツをはいていると
また涙がこみ上げてきた。

肩が小さく震えた。




大ちゃんは、後ろから抱きしめて

「がんばれよ」と言ってくれた。



助けてくれてありがとう。

優しくしてくれてありがとう。

気持ちに答えられなくてごめんね。




一人で家に帰る道のりも
涙が止まらなかった。

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