俺様執事に全てを奪われて
見合い相手は華道界のプリンス
「こんにちは!」

わたしは笑顔で、聖一郎の教室に入っていく

事務所で、聖一郎と色っぽ女性が話し合っている

きっと教室の事務をしている女性だろう

聖一郎が振り返ると、ぎょっとした目をしてわたしと後ろにいる元の顔を見る

「あ…しい…じゃなくて乙葉…どうしてここに?」

今…わたしを『椎名さん』って呼ぼうとしただろ?

ま、いいけど

…て何?

聖一郎、なんか怯えてる?

元のほうを見ながら、聖一郎は困った表情をしていた

「聖一郎、私も華道の勉強をしたいわ」

わたしは笑顔で、聖一郎の腕にしがみついた

見合い相手だから

これくらいのことはしないとねえ

「ひゃああぁ(何をするんですかっ!)」

聖一郎が冷や汗をかきながら、小声で言ってくる

「あれ一回こっきり…なんておば様に怪しまれるだろうがっ」

「ですが…こういうのは」

「バレていいのかよ」

「よくないですけど…」

聖一郎が泣きそうな顔をする

ま、泣かないだろうけど

よわったなあ…と言わんばかりの顔をして、目尻を下に落としていた
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