恋するキモチ
「大丈夫だからっ」
七瀬先生は俺の肩を押しのけ立ち上がると、クローゼットからタオルを取り出し、涙を拭いた。

そして、玄関近くで背を向けて立っていた。


「先生、俺、」
先生の背中に向かって俺は声をかける。

「俺、先生のことが…」
先生のことが
好き
って言おうとしたのに
「私なら!」
七瀬先生の大きな声がさえぎった。


「私なら、大丈夫だから。もう何回も失恋なんかしてるし。高校生になぐさめてもらわなくても大丈夫!」

そう言って振り向いた七瀬先生の顔は、笑っていた。


そして、玄関の扉を開け、
「今日はごめんね。また明日」
そう言われてしまった。
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