モラルハラスメントー 愛が生んだ悲劇
ある日の夜、裕子の携帯に友人からメールがきた。

ベットの隣で横になって漫画を読んでいた夫の肩がピクっと動く。

(しまった。 マナーモードにしていなかった。)

漫画のページをめくる動きが止まっている。



『男か?』

低く暗く響くその声は、嵐がくる前の黒い空のようだった。

「・・・男友達のアドレスは、言われた通りに全部消したってば。

古い友達だよ、引っ越しするみたいで・・・」

本当のことを話しているのに、声が揺れる。


『そうか。 その女のアドレスも消しておけ。
こんな夜遅くにメールを送るような非常識な人間と関わる必要はない。』


それだけ言うと、またページをめくり始めた。


裕子の全身に立った鳥肌は、夫が眠りにつくのを確認するまで消えることはなかった。


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