Ｇｏ ａｇａｉｎｓｔ ｓｔｏｒｙ

王族の血

「確かに、私の国にはトランスに関する書物があります。でも…人間に戻る方法なんて…」

言いかけた王女の言葉に男は首を振った。

「違うんだ。トランスが人間に戻る方法がないわけじゃない…ただ、この少年は普通のトランスではないんだ。」

重々しく言った男はノゥンの瞳を見つめた。

「方法はあるんか！？やったら何でノゥンは無理やねん！！」

詰め寄るタカに男は黙ってしまった。

「お願いします！教えてください！」

ノゥンは男に頭を下げて頼んだ。

すると男は重々しく口を開いた。

「その銀色の髪。緑の瞳…そして魔族よりも強い魔力…。君はきっと…魔族の王の子供だからだ。普通のトランスのようには…きっと人間に戻れないだろう。」

その言葉に、その場にいた全員が絶句した。

ノゥンはがたがたと肩を震わせた。

「僕が…王の子…供？」

さらに男は続ける。

「君には酷かもしれないが…多分、君の体に流れる血は王位継承者の血だ。…トランスとは言え、人間の血は遥かに薄い…。君には我が体に流れる血とほとんど同じ繋がりを感じる。」

そう言い終えた男は、悲しそうにノゥンを見つめた。

タカは言葉を無くし、立ち尽くすノゥンを見て、唇を噛み締めながら男に言った。

「でも…でも！トランスが人間に戻る方法があるんやろ？何かの間違いで戻るかもしれんやん！！その方法を教えてくれっ！！」

男は立ち尽くしているノゥンを横目に、静かに言った。

「トランスが死んだときに、その魔力だけが残りクライと呼ばれる石になるのは知っているな？…実はそれを生きているときに取り出すことによって、魔力だけが消えて人間になるのだ。しかしその為には三つの物を集める必要がある。一つは、魔物を封じ込めた玉。もう一つはトランスハンター。…最後に自分の最も愛する者。ただ最も愛する者は相手も同じ気持ちでなければならない…。…だが、トランスハンターの村は盗賊により滅ぼされたと聞く…三つを集めることは…」

「オレがそのトランスハンターの生き残りや！」

そう言ったタカに、男は驚いた。

「君が？…例えそうだとしても、これはあくまでもトランスの話だ。王族の血を引く者に効くかどうかは…」

男は言いかけたが、タカの強いまなざしに黙って考えた。