硝子の靴 ~夜帝の紅い薔薇~少女A~
【夜の仕事?】

私は、心の中で疑問を呟いたものの、声にならないでいた。

「ごめんね、ほんとごめんねぇ。初めて聞くかなー?まだ、若いよねぇ。あっ、でも最近の子は大人だからぁー知ってるか、ね?」

「?………?」

「君、ほんと綺麗だね。ヤバイ。君ね、No1だね」

「????」

私は、その人の言っていることが全くわからなくて、ただ漠然と、その人に目を向けて黙って聞いていた。

「…んー……」

その人は、苛立ちだしたのか、はたまた困ったのか、しゃべるのをやめて、目を落として髪をかきあげていた。
私は、初対面の人と話す勇気はなく、話を聞くだけで精一杯だった。

「んー、なんかこう、…なんか返事してよ。興味あるとかないとかさ、あっ、質問でもいいよ。何でも聞いちゃって、何でも答えるよ」

「………」

「あぁ、……。しゃべってくんないとさ、君が何を思っているのかわかんないし…」

【私が、思っていること?】

私は、新鮮だった。

今まで、そんなふうに言われたことはなかった。

私のことは、両親が決めていたので、私は、私の意見や言葉を求められたことがない。

そして、そうだったということを、今気づいた。

これまで思いもしなかった。

私の中で、何かが生まれた。

「まっいいや。俺だけ一方的にしゃべって、なんかさ、無理に引きとめてるみたいで、カッコ悪いし。いつでもいいからさ、ちょっとでも興味わいたら電話して。わからないこととかさ、くだらないことでもいいよ。電話して。番号は、その名刺に書いてる。待ってるね」

そう言って、その人は去って行った。

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