硝子の靴 ~夜帝の紅い薔薇~少女A~
『あの人、花瀬日和さんでしょ?』
『えぇ、貴方、違う学校の方よね。日和さん、ご存じ?』
『勿論。成績優秀な花瀬さんは、うちの学校でも有名です』
『そうですか』
『日和さんも、見にいらしたのね』
『私、挨拶したいなぁ』
『駄目よ、やたら声をかけては失礼よ。私もした事ないのに…』

私が通るのを横目で見ながら、同級生達は、口々に囁いていた。


掲示板の前に来た。

私は、ゆっくりと掲示板を見上げた。真っ白な掲示板に、沢山の番号が書かれている。
私は、ゆっくりと自分の番号を探した。

番号は、1041。

1030、1035…38…………!…

「あった」

お茶目な声で小さく呟いたのは、隣で掲示板を見ていた母だった。

それと同時に、いや、それよりも少し早かっただろうか、私も、書かれている自分の番号を確認した。

「日和、おめでとう」

「有難う、お母さん」

「さぁ、今日は、貴方のための御祝いパーティよ。帰りましょうか」

「はい」

母は、大変喜び、満足げに安堵した笑顔だった。

私は、何故か、大して喜べなかった。

確かに、受験からの解放感と達成感はあった。
敢えて、喜びを思うとすれば、母が喜んだこと。父に報告すれば、父も喜ぶ。両親の喜ぶ顔を見る時だけ。

それがなければ、何故か、嬉しくなかった………何故か………


そんな心境で、私は歩みを進める。



「花瀬のおばさま、こんにちは」

聞き覚えのある声がして、見ると、声をかけてきたのは、同級生の、桐生隼斗だった。

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