硝子の靴 ~夜帝の紅い薔薇~少女A~
見ると、
色っぽい女性が立っていた。


長い黒髪を右肩一方で集め、
深いスリットの細身のロングドレスから
足をちらつかせ
妖艶に立つ。


そして、
日和を見ている。


日和は、
見知らぬ女性が自分を見ているのを
不思議に思いながらも、ただ、
黙って見ていた。



女性は、
ゆっくりと日和に歩み寄って、


「ちょっと、
聞いていい?」

「は…い…?…」


女性は、鋭い眼差しになった。


「あんた、

龍星さんの女なの?」


「えっ、…」


― 女…?… ―


高校生なのだが、
男性経験のない日和にとって聞き慣れないことを尋ねられて、
日和は、一瞬、躊躇した。


「ち、違います」


日和の言葉に、
女性は笑みを浮かべる…


「そうよね。

あんたが本命だなんて、おかしいわ。
笑っちゃう」


「笑っ、ちゃう…」


「えぇ。

龍星さんを狙ってる女はゴマンといるのよ。
あんたが現れる前から。

あんた、その人たちを敵にまわすつもり?」

女性は、日和を見て鼻で笑った。


「あんたがね、綺麗な顔立ちしてたところで、
龍星さんをモノにはできないわよ?」


「私は…そんなつもりじゃ、」

「なら!
なんで、龍星さんにくっついてるのよっ」

「えっ…」

「目障りなのよ」


日和は、目を丸くした。


女性は、急に微笑み…


「あんたのために言ってるのよ~

女どもを敵にまわしちゃ、あんたの身が危険よ。だから、ね?

早く、龍星さんから離れて、ね?

それに、

龍星さんには、儷美子さんがいる」


「え……レミコ、さん?」


日和は、小さく尋ねる。
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