ブラックコーヒー

1−3

「いつものお願い。」

「はいはい。」


すっかり店に馴染んだ彼は毎日同じものを注文するので、
もう私達の間では「いつもの」で通じるようになっていた。


会話もたくさんするようになった。

意外と子供っぽい一面があったり、学校の話もしてくれたし、私もよく自分の事を話した。



そんなある日、


「なぁ姉ちゃん」

「何?」


少年はいきなりこんな事を言い出した。


「彼氏いる?」


……………。

えーと。

何でいきなりその話になるかとか
じゃあ君はどうなのとか
そもそもそんなの聞いてどうするんだとか
色々言いたい事はあったが、
取り敢えず本当の事を言った。


「………いるよ」

じゃあ君は彼女いる?と聞き返そうとしたとき、
少年ははぁ、と小さく溜息をついて言った。

「そりゃあんた美人だし当たり前だよな…」

え、何この微妙に落ち込んだ……
落ち込んだ?

「べ、別に美人なんかじゃ…」

「美人だよ。すげぇ可愛い。」


可愛い、なんて言われてどきりとした。

そんなの彼氏にだって言われた事はなかった。


嬉しい、かも。


「…ありがと」


少し照れて笑う。

少年もどこか恥ずかしそうに笑った。
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