続きは、社長室で。2


広々とした病室にマッチした、大きなベッドを取り囲んでいるのは医療機器。



その中に囲まれて眠っているのが、見間違いようのナイ愛しい人の姿…――



入室した杉本さんが、ベッド脇で観察をしていた看護師と会話をする最中に。



「た、くみ・・・」


蚊の鳴くような声で彼の名を呼ぶと、ベッドまで歩み寄って向かった。



だけれど拓海からは、何の応答も反応も返って来ない・・・




ガッシリとした逞しい左腕は、力なく点滴の針が通されている状態で。



そして反対の右腕には、痛々しい傷を覆うように包帯が巻かれている。



あの優しい笑顔は、何処ですか・・・?



一日で大きく変わってしまった、愛おしいヒトの姿に呆然としていれば。



後ろから不意にポンと肩を叩かれて、拓海を気にしつつも振り返った私。



「佐々木さん、社長なら大丈夫だよ」


「杉本さん…」



「頭を強く打って脳震とうを起こしてるけど、CTもMRIも大丈夫だって…。

薬が効いてるのもあるけど、今は眠っているから問題ないらしいし。

右腕の怪我も大事には至らないから、1週間の入院で退院出来るよ…」


先ほどの看護師さんは、私の迎えに離れた彼の代わりに付き添ってくれたそう。



「っ、よ、かった・・・」


バクバク鳴り響く心音が、杉本さんの言葉に抑制を受けていく気がした。



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