お姫様と7人の王子様
バレンタインデー(ティック)




チョコレートケーキ



今日はバレンタインデーということで、日ごろお世話になっているティックにチョコレートをあげることにした。



別にそれ以外の意味はないと自分に言い聞かせながら、さっき作ったチョコレートマフィン片手にティックの部屋へと向かう。
自分に言い聞かせるのは、そうしないと変に緊張してしまうからだ。


「アリス様」


部屋へと向かっていた途中聞こえてきたティックの声。
声のした方向を向いてみると、そこには珍しいエプロン姿の彼。


「探していたんですよ」


そういいながら駆け足で私の近くに来るティック、その瞬間何故か甘くて心地よいかおりがした。


「どうしたの?」


本人を目の前にしてしまうとなんとなく緊張してしまう。
私の変化のみに敏感な彼には、ちゃんといつも通りに映っているか心配になる。


「アリス様に見て欲しいものがありまして……。僕の部屋に来てもらえませんか」


どうやら、気付いていないらしい。
何かあるのか、小さい子のように首をかしげ不安げに聞く。
そんな可愛いティックを見るとついドキドキし顔が熱くなる。


「い、いいよ」
「良かったぁー」


そう子供みたいに言うと、ティックは私の左手を引っ張り自分の部屋へ戻る。
最初連れてこられた時と同じシチュレーション。
それだけなのに……その時とは全く違い彼を意識してしまう。


やっぱり今日の私は変だ。


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