【連作】そらにかなでし〜平安朝禁断恋草紙④〜
「しかし、女の身には、しかとした背の君(夫)があることこそ、幸せと存じますれば……、香月とても、妾腹(わきばら)の姫でさえなければ、あのように愛らしい娘のこと、貰い手もいくらもあろうに、これからを思うと、兄としては心苦しい限りなのですよ」

若者のこのおっしゃりように、一の君もまた、微笑まれてお返しになりまして、

「かの姫にあっては、我が妹も同然。私も、彼女にはいずれ良縁を、と望みますよ」

と、二の君を振り向かれてこのようにおっしゃるので、二の君は、その赤いかんばせを少しばかりお背けになるのでした。
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